「あ、ちょっと、話はまだ終わってな──…」


ぱたん。


みやびの抗議を最後まで聞かないで、扉は無情にも閉まった。

むぅ、と尚もそれをにらみ続けるみやびの襟元を掴み、ずるずる引っ張る宏海。


「なっ、痛い! 首絞まる!」


「……仕事、あるんで」

「……はい」


なんとなく後味悪く、微妙な空気が漂ったまま、ふたりは扉の前を離れた。



「……ふふっ」


にぎやかに去るふたりを、妖しい視線が絡めとり。

物陰に潜んでいたそれが、不気味な笑い声を残し去っていったことに、誰も──。

……気づいて、いなかった。