｢お前ハタチね､大学生｣

｢はい？｣
武本さんの言葉の意味がわからずに矢城君と武本さんの顔を交互に見る

｢今日､合コンだから｣
矢城君がニヤニヤと付け足す


｢とりあえず高校生はまずいからな｣
｢なんか公務員とか言っといた方がよくないですか？｣
｢いーんだよ､陵が俺らよりモテたら困るだろ｣

そう言って歩き出した二人の後ろを歩き

初めての合コンに胸が高鳴るのを感じる

何浮かれてんだよ俺

と自分に突っ込みながらもやっぱりワックス持ってくれば良かったとか

俺も男なんだな

と実感してしまう



駅からすぐ近くの居酒屋はなんだか薄暗く落ち着いた雰囲気で高校生の俺には十分非日常だった

｢ってかお前なした？顔｣
矢城君が俺の顔を見てまた不思議な顔をしてる

｢あー…ちょっと｣
口元の切り傷に指で触れると､まだ少し痛んだ

初めての合コンで緊張するのに上手く年をごまかせるかとか髪型とか服装とか…もちろん顔の傷も全部気になって

汗ばむ両手をしきりにおしぼりで拭っていた

｢ごめんね､遅くなって｣

待ち合わせぴったりの19時半に現れた三人の女の人は皆それぞれキレイな人だった

肩までの茶髪をゆるく巻いて幾何学柄のワンピースの榊原千絵さん

ショートカットで色白でスキニーデニムの古谷歩美さん

長い黒髪のストレートヘアで黄色いカットソーに薄い素材のふわふわしたスカートの就本鈴子さん

｢はじめまして｣

｢…どーも｣
俺の前には鈴子さんが座ったけど､なんだか照れて顔はよく見れなかった

｢…痛そう｣
鈴子さんが俺を見て呟く

｢昨日､転んじゃって｣
笑ってごまかしたけど

見透かされる気がして目は合わせられなかった