もう着替える必要がなくなった俺は

駅のトイレを通り過ぎて

地下鉄に乗る
電車に乗り継いで



ようやく愛美の姿はなくなっていた



駅に着いて

瑞貴の家に向かった



窓を見上げても瑞貴の姿はなくて少し迷って

携帯に電話したけど



出ない


どーしたんだろ…




そういえば
俺、自分の事でいっぱいいっぱいで

全然瑞貴のこと
聞いてやれてないんだよな


まぁ聞いても瑞貴は話さないんだけど



でもやっぱり

最近ずっと元気がなかった瑞貴を

思い出して

本気で心配になっていた




「橋本くん…だよね?」
突然呼ばれてビックリして振り返ると

冴島さんが立ってる

「瑞貴に用事?」

瑞貴の家の前で立ちすくむ俺に遠慮がちに聞く

「あー今日休みだったから…」
初めて話した冴島美央は思ったより話しやすい雰囲気の普通の子だった

「…私もちょっと気になってメールしたんだけど、最近瑞貴メール返してくれなくて」

うつむく仕草が瑞貴にそっくりで驚きながら

いつか瑞貴んちで話してた時に

見ただけで返信しなかったメールの相手が冴島さんだったんだと

思いがけず気が付く



「…まぁ、大丈夫だと思うけどな」
少し気まずさを紛らわす様に言って

いつも瑞貴にする様にじゃあなと冴島さんに手を振る


冴島さんも少しだけ笑って俺と逆の方向に歩き出した