何度鳴らしても
出てくれない電話

何十通と送っても
返事のないメール



もう

行くしかない



合い鍵を握りしめて
鈴子さんの部屋に向かう


どうしよう

どうすればいいんだろう



部屋に着き鍵を開ける

ガチャ ダン


「…っ」
チェーンがかかってる



「…鈴子さん?」

ドアのすぐ近くに気配がする


「話聞いて?」


鈴子さんの息が少し乱れているのを感じて


泣いていることを悟る


「…ごめんなさい」



鈴子さんの息遣いが嗚咽に変わる

今すぐ

今すぐに
抱きしめたいのに



貴女がかけた
チェーンが邪魔をして

届かないよ




「…鍵。鍵返して」
絞り出す様な悲痛な声が俺の胸を突き刺す

「…嫌だ…嫌だよ、お願い、お願いだよ…見捨てないで」



「出てってよ…もうっ陵の顔なんて…見たくないっ」

「嫌だ…嫌だよっ」

思わず

涙が流れてしまう



「…帰って」

鈴子さんの嗚咽が激しくなる



ドンッ

不意にドアノブを持つ手を緩めたすきに

ドアは激しく閉められて



鍵をかけられてしまった




合い鍵はまだ持っていたけど

開けても

…鈴子さんの心の鍵は開かないって事が俺にはわかってしまった



仕方なく

とぼとぼと帰る道で



目からは涙が流れ続けていて

すれ違う人達に

じろじろ見られていたけど

そんな事はもう
どーでも良かった



鈴子さん以外の人なんて



いてもいなくても




おんなじ