「それ以来ちょっと気まずいんだ」

水族館の一件から会っていなかったしメールも電話も素っ気なくて

明日からまた週末だというのに
ハッキリした約束もなく

不安は募るばかりだった

瑞貴と放課後の教室の窓から校庭を見下ろす



「…実は火曜日の放課後、愛美が俺んとこ来たんだよね…陵ちゃんの彼女って何してる人なの?って詰め寄られた」

「…なんて答えたの?」

「知らないって」



瑞貴が肩をすくめる

~♪♪♪~
―鈴子さん―



「鈴子さんだ」

瑞貴がどーぞと手の平で促す

「…はい」

「―今どこ?」

「えっ…学校」

「―学校ってどこ?」

「…どーしたんだよ」

嫌な予感がする

「―…信じられない…」
「何?どーしたの?」

じんわりと汗が滲む



「陵!あれって…」
瑞貴が指を差した

校庭の向こう側の道路に駐車してある赤いパッソは

鈴子さんの車だった



見通しの良い校庭を挟んで見つめ合っている

俺と鈴子さん


「―嘘つき」
ブチ

ツーツーツー



急いで

教室を飛び出して

階段を駆け降りて

上履きのまま

校庭に飛び出した



けどもうそこには

赤いパッソも
鈴子さんも

いなくなっていたんだ