「今の人が陵ちゃんの彼女なの?」

愛美に詰め寄られて

思わず立ち上がる



「関係ないじゃん、あっち行けよ」

「大人の人なの?」

「いいから行け」



鈴子さんが来ちゃうじゃんか

「陵?」
鈴子さんが戻って来てしまった



愛美を見て鈴子さんが戸惑いながら会釈したけど


愛美はただ黙って鈴子さんを見つめている



「行こう」
鈴子さんにかけよって手を取って歩き出す

「えっ…だっていいの?」
鈴子さんが何度も後ろを振り返って見る




黙って歩き続ける俺に鈴子さんも同じ様に黙ってついてくる



黙ったまま15分くらい歩き続けていつの間にか出口付近まで来てしまっていた

「もう、帰ろっか」
呆れた様な口調で鈴子さんが呟く

「…あっいや、ごめん」
慌てて弁解しようとするけど上手く言葉が見つからない


「…いーよ、会いたくなかったんでしょ?あの子に」
そう言った鈴子さんが少し淋しそうに見えて

寄り添ったけど

すぐにいつもの笑顔に戻っていて

なんだか切なくなった

帰り道はお互い気まずくて悲しくなってしまう



そんな時間をなんとかやり過ごして鈴子さんの部屋に辿りつく



その日はずっと鈴子さんが冷たい気がして落ち着かなかった

眠る時も背中を向けるもんだから

何度もうなじや背中にキスをしたけど



振り向いてはくれなかったんだ