遮光のカーテンの隙間から朝日がこぼれてる


「…んっ」
起き上がろうとする鈴子さんを引き寄せて抱きしめる


「んー離してぇ」
「もうちょっと…」

逃げない様にきつくきつく抱きしめる


「だめっ今日は水族館行くって約束でしょ?ほら起きて準備っ」

俺の腕からするりと抜けて
更に腕を引っ張って起こそうとする


「…はいはい」
眠い目をこすりもぞもぞと起き上がる



シャワーの音がする

一緒に入ろうとこっそりドアに手をかける

ガチャ

ありゃ

ガチャガチャ


「何、鍵しめてんだよ~」

「変態っ」
鈴子さんがふざけてケラケラ笑う


呆れながらも鈴子さんがドアを開けてくれて

二人でシャワーを浴びる



あがって髪を乾かしあって着替えて部屋を出る



「ペンギンいるかな~」
「ペンギンはいるでしょ?」

「ワニは?」
「ワニもいるんじゃない?」

二人でくだらない会話を繰り返しながら

地下鉄と電車を乗り継ぐ



秋口の水族館はやっぱり少し混雑していて

同級生に会わないか少し不安になりながらも

俺は鈴子さんの手をとって水族館の中を歩く



「綺麗だね、くらげ」
「スーパーのビニール袋みたいじゃん」
「もー陵はそんなんばっかじゃん」

笑ってる
鈴子さんが

好きだった

守りたいと思った



金も脳みそもない
ただのガキの俺が

金も車も部屋も
持ってる大人の女を

守りたいなんて

馬鹿みたいだよな



「トイレ行ってくるからここで待っててね、動いちゃダメだよ、迷子になるから」

「はーい」


トイレから少し離れたベンチに腰を下ろす



「陵ちゃん」
突然呼ばれて振り返る

やべ…



愛美…