ようやく最後の鐘が鳴り



すぐに教室を出て早足で階段を降りる

逃げる様で
嫌だったけど

教室で注目される方がずっとずっと嫌だった



「陵っ」
上から瑞貴に呼び止められる

「一緒に帰ろう」
横に並んで歩き出す



玄関で愛美と愛美の友達のグループに会って気まずかったけど

なるべく気にしない様に通り過ぎる



伊崎の居るグラウンドの脇の道も、うつむきながら通り過ぎる

「陵は悪くないよ」
そんな俺を見兼ねて瑞貴がかばってくれる

「…ってか、さっきサンキューな」
「…あぁ。別に…事実を言っただけだよ」

照れた様に少しだけ瑞貴が笑う

「それに俺、嫌いだから…伊崎のこと」
急に瑞貴が表情を曇らせて言う

…意外だった

瑞貴が誰かを嫌いとか
そんな事は初めて聞いたから

でもそんな瑞貴がとても人間らしく思えて

少し安心した


こんな状況の中

初めて心の許せる友達が出来た様な気がして

少し嬉しくなって

心なしか足取りが軽くなる

もう学校は遥か彼方で

夏の終わりのまだ生温い風が俺と瑞貴の間を通り過ぎていく