「じゃ、俺帰るわ」

「えっもう?泊まってけよ」
瑞貴が俺の服のすそをつかむ
「意味わかんねーし」


じゃあなと手を振って瑞貴の部屋を出て

やっぱり瑞貴そっくりな母親にも会釈をして

外に出る

帰り際の瑞貴の曇った横顔が気になって部屋の窓を見上げると

瑞貴がいる

頬杖をついて俺を見下ろしている

少し心配になって大丈夫かって言いかけた時

思いっ切り変顔をしてきたから

少し呆れて

やっぱりじゃあなと手だけ振って帰路につく



鳴りもしないのに携帯を開いたけど…鈴子さんからの連絡はなかった

まだ昼過ぎだけどさ

昼休みとかメールしたりしないのかなぁ

ってか俺のこと
気になんないのかなぁ



昨日は確かに俺の腕の中にいた人なのに

今はまだやっぱり俺達は他人みたいで

不安は募るばかりだった



その日家に帰っても一日中落ち着かなくて

しびれを切らした俺はとうとう夕方、自ら鈴子さんにメールを送った

[まだ仕事中?やっぱり今日も会いたい]



~♪♪♪~
[私も会いたい(^w^)]

俺はすぐに家を飛び出した

「あんたまた出掛けるのー?」母さんの声がして一旦玄関に戻る

「夏休みだから瑞貴んちでゲーム大会」
嘘をついて家を出る

この嘘に罪悪感は全くない

だって
そこに愛があるから



漫画みたいに自転車に飛び乗って

俺は残された夏休みのほとんどを鈴子さんと過ごした