瑞貴そっくりの母親に軽く会釈して瑞貴の部屋にあがる

「すげーじゃんっOLキラー」

部屋に入るなりサッカーボールが飛んで来る

「あぶね」
キャッチしたボールをベッドに座っている瑞貴に投げ返す

「でっ?チューした?」
仔犬みたいに瑞貴がまとわりついてくる

「…全部、した」

「えーっ!!」


瑞貴が目を丸くする

「んだよっ」
「いや…おめでとう」

食べ終わったアイスの棒をくわえたままの俺をきょとんとした顔で見つめている

「なんか…男になっちゃってつまんなーい」
「…は?」

瑞貴が女みたいに唇を尖らせる

「ってかさ、お前はどうなの?女とかいんのかよ?」
「…ん?」
瑞貴が長い前髪をゴムで結びながら振り返る

「…俺は~…いるよっ彼女の一人や二人~」
「ほんとかよ?」

瑞貴はいつも俺の前ではふざけていて

でもモテないわけじゃないことはわかっていた



「…ってかさ、誰?」
「…陵の知らない人だよ」


瑞貴はいつもそうだった


他人のことは詮索するくせに自分のことは話したがらないんだ

「…良かった?」
不意に瑞貴がマジな顔で問い詰める

「は?何が?」

「り・ん・こ・さ~ん♪」
瑞貴がニヤニヤと俺の顔を覗いてくる

「…言わない。ってかお前の事言えよ」
「しっつこいな~」

~♪♪♪~
聞き慣れない着うたが鳴って瑞貴がベッドの下に落ちた携帯を拾いあげる

画面を見てすぐに携帯を閉じる

「…メール返さないの?」

「別にいんだよ」



瑞貴の表情が少し曇った様な気がした