エレベーターを降りて部屋のドアの前で鈴子さんがバックの中を手探りで鍵を探している

「あれ?…どこだっけ?ちょっと待ってね」

鈴子さんがなんだかいつもより焦っている様に見えて可愛く思える

「…あった」
鍵を開けて部屋に入る鈴子さんに続く

玄関の横のスイッチに手を伸ばして電気をつけようとする鈴子さんを後ろから抱きすくめた

「えっ…ちょっと」
「嫌?」


鈴子が強張らせた体の力をゆっくり抜いて

少し深いため息をつく

「…期待させないで」

鈴子さんの言葉に何かが決壊した様に俺は鈴子さんを強く強く抱きしめる



「好きなんだ…会った時からずっと」
絞り出す様に言うと

鈴子さんが俺の腕を優しく解いて

俺の方に向き直る

「私もだよ…」

鈴子さんが立ちすくむ俺に触れて

暗い中で探し出した唇にキスをした



ずっと

ずっと

鈴子さんに触れたかった俺は今まで押さえ付けていた欲望が解かれて

夢中になって触れた

柔らかな頬や

サラサラの髪


細くくびれたウエスト

冷たい床に靴のまま押し倒して求め合う


不思議だった

初めてなのに


どうすればいいのか
どんな風に愛すればいいのかが

本能的にわかっていた



「ベッドに行く?」
「…ここでいい…」



満たされるのは欲望だけじゃなくて

こんなにも心までも

甘く切なく満ちていくことを

初めて知った



愛おしいという
言葉の意味を

初めて理解した



甘い時間は

果てても果てても
繰り返しやってきて



一晩中

鈴子さんから
離れられなかった