「でもほんとに彼氏じゃないと思うよ」

「…別にそれはいーよ、いてもいなくてもどうせ相手にされないって」
自分に言い聞かせる様に言う

「弱気だね~らしくないじゃん」
瑞貴が馬鹿にした様にケラケラ笑う



話す気なんてなかったのに相当参っていたのか

俺は瑞貴相手に鈴子さんとの出会いを全て話してしまっていた

「その武本さんの更に先輩って事は22とか3かぁ~そんな離れてないじゃん」
瑞貴がなんだか嬉しそうにコーラをすする

確かに…最初に会った時はもっと上に見えたんだよな

「でも例えさっきのが彼氏でなくても他に彼氏いるかもしれないし…だいたい俺、高校生だよ?」
いつになく弱気な俺をおちょくる様に瑞貴が鼻で笑う

「バレなきゃいんじゃん、だって鈴子さんにしたら陵って大学生なんでしょ?」

それは俺だって考えたけど…

「こんな狭い札幌じゃ、いつ鈴子さんに制服姿を目撃されるかわかんないじゃんか」

なんだかんだ今日だって遭遇しちゃってるし

「…制服で帰るのやめれば?」



その日から俺は放課後になると駅のトイレで私服に着替えて帰るようにした

それでもそれ以来鈴子さんに会うどころか見かけることすらなかった



鈴子さんと出会ってもうすぐ二ヶ月が過ぎようとしていた夏休みの真夏日



あの時のままのちょっと時代遅れの着うたが鳴り響いた