「問題は、下よねェ」


仰向けでカエル泳ぎをしながら、アスカ様は呟いた。

今のところ、急所はおさげで隠してある。


「どうせなら……あのビキニよりも可愛く生まれ変わった姿で、ユッチに会いたいなァ」


──この時、乙女モード全開のアスカ様は気付いていなかった。


ユラリユラリと、自分に近寄る影の存在に……。


影は着実に、アスカ様との距離を縮めていく。


「さっきの女が、下も履いてればよかったのにィチッ使えないヤツ……ん?」


──それは一瞬の出来事だった。


アスカ様の視界一面に広がる青空が、突然赤に変わった。

半円を描くように等間隔に並んだ白くて短い針。

それが振り落とされるように近づいてきたのを、間一髪、おさげを縦に立て防いだアスカ様。


自分の急所はもう片方のおさげでバッチリ隠してある。

抜かりはない。


縦にしたおさげをそのまま直角に伸ばし、赤から逃れるように自分を遠ざけた。


ここまでを、アスカ様は僅か1秒にも満たない早業でこなしたのだ。

恐るべき反射神経。