──おれは苦悩していた。


「ぶはッ!なにそれ!めっっっちゃ、ウケるんですけど!!」

「お前、漫画の読みすぎなんじゃねぇの?」


肌寒い朝。

教室の窓際の最後尾は、3名の集団により、妙な盛り上がりをみせていた。


あちこちに絆創膏やガーゼを貼り、頭と右腕を包帯でグルグル巻きにしているおれは、教室でもかなり目立っている。

学校に来るまでも、行き交う人々の注目の的だった。


が、今はそんなことに構ってる余裕なんかない。


「マジなんだって!!ヒロ、セイヤ!!」

「いやいや……髪の毛を自由自在に伸び縮みさせるなんて、人間技じゃないっちゅーに!」

「チャリごと相手を跳ね返す人間なんて、どんだけ丈夫なんだよ」


おれの真剣な訴えは、全くコイツらには届かない。


昨日のことをヒロとセイヤに話したはいいものの……。

なぜか誰も、アイツの恐ろしさをわかってくれねぇんだ。


なんで?


おれはあまりの恐怖に、昨晩一睡も出来なかったっていうのに……。


「だから!マジで伸びんだって!だってあの髪に脅されて、付き合うことになったんだぜ!?あとな!チャリも跳ね返すくらいの体格してんだよ、アイツは!」

「お前、事故で頭打ったんじゃねぇの?どこの世界にいるんだよ、そんな最強な女が」

「だから本当に……」


呆れ混じりの表情を浮かべるセイヤに反論しようとした、その時。


おれの言葉は遮られた。


「……信じてるぜ」