「はぁー・・・」

いつもより闇が深い夜
窓辺にもたれて月を見ていた夜
細く白く光る月は、少女の心に冷たい。
少女は、何度目かのため息をついた。

「クロウ・・・」

愛しい人の名を呼んでみる。
しかし誰にも届くことなく、夜の闇に紛れて消えた。
彼とはもう終わった。
何度も、自分に言い聞かせた。
諦めた・・・筈だった。
でも・・・

「まだ、忘れるなんてムリだよ・・・」

ぽつり、雫が零れる。
ぽろぽろと落ちる涙は、月の光に照らされていた。

『シャイニー・・・』

少女の名が呼ばれる。
しかし、辺りには、人の影は見当たらない。

『シャイニー、泣かないで・・・』

声は大きくなっていく。
シャイニーは、ふと、月を見上げた。
先程と変わらない、細く白い光。
その光は、どこかあたたかさを増していた。

『シャイニー、此処だよ・・・』

月の光が強くなる。
闇が二つに割け、背中に透明な羽が生えた少年がこちらへ向かって来た。