クラスにもだんだん馴染んできた

夏休み前のある日の昼休み、

「滝下くんてさ、絵上手なんだね。」

不意にそんなことが

話のネタにあがり僕は一瞬黙った。

今、

親と進路のことでもめていたので

あんまりその話題には

触れてほしくなかったのだ。

僕はなにも言わずに

弁当をつついていた。

きっとその時僕は

不機嫌な顔をしていたのだろう。

彼女は僕を数秒見つめた。

が、

それを気にする素振りも見せずに続けた。

「だってさ、確か1年のときの写生大会で金賞だったでしょ?ほら、会議室の廊下のところに展示してあったから。あの絵、えーと…そうそうあのグランドから描いた校舎の絵。上手だったよね。私、知ってるんだ。滝下くんが絵を書くの好きなこと。いつもノートに落書きばっかりしてるでしょ。私が見ようとしたらすぐに隠すもんね。」

といたずらっぽく笑った。

かわいい。

…いや、そんなことはどうでもいい。

というか、

一体誰の絵と

勘違いしているのだろうか。

僕はうつむき、

坊主頭に手をやりながら

ひと呼吸おいて

「深草さん、僕の絵は…金じゃなくて銀賞だよ。あと、僕の絵は会議室の中にあったんだけど。誰のと勘違いしてんのかな?ちなみにいつも僕がノートに書いてるのは落書きじゃなくて、げ!い!じ!ゅ!つ!、つまり、ア!ー!ト!わかる?」

と返した。