「さ、佐野君!!」
あたしの下を去って行く佐野亮太を、
大きな声で呼び止める。
呼び止められるなんて思っても見なかったのか、少しびっくりした表情で佐野亮太は振り返った。
「ありがとう!」
まだお礼を言ってなかったことを思い出して、
近状迷惑なんじゃない?
ってくらいの大声で叫んだ。
佐野亮太は少し停止してて、
しばらくすると満面の笑みであたしに手を振ってくれた。
“男”なんて大嫌い。
無神経で、自分勝手で、
人の気持ちなんて考えてない。
だけど佐野亮太は違う。
だって、
あたしが恋に落ちてしまったんだもん。
周りの“男”と一緒にしないでよ。
さっきのさっきで
“恋”なんて馬鹿げてる。
でもこの煩いくらいに高鳴ってる、
この胸の音が証拠でしょ?
それにほら。
姿が見えなくなるまで見送ってる。
きっと佐野君が、
あたしだけの王子様なのかもしれない。
-END-