「あのさぁ」と気まずそうに切り出した英語を教える担任の高橋は、
職員室をある程度見渡すと私のほうにもう一度視線を戻して言った。

「柳さんの仲がいい子って、やっぱり堀田さんか吉田さんだよね?」

「やっぱりってなんですか」

あまりに気まずそうな彼を和ませるため、私は軽く笑いながら言い、
これから始まるだろうよからぬ尋問に覚悟を決め、
どうせならこちらからもその真意を探って帰ろうと敢えて無邪気に応対することにした。

「うん、それがねよからぬ噂があるんだけど」

「はい」

「吉田さんの彼氏とか、そういう話は聞いてるかな?」

「彼氏ですか?知らないですけど」

「そういう話はしない?
 いや、ちょっと親御さんがよからぬ噂を耳にしたって言う連絡が着てね。
 吉田さんは大分年上の人とお付き合いをしていて、それがなんていうか」

煮え切らない担任は右手で頭の後ろを書きながら、
私の腰掛ける席に置いてある、理科のプリントに目をやった。