雛子は英語でメモされ、黄色の付箋が貼られた日本語のガイドブックを両手で持ち、
公園内とそれとを交互に見ながら、ときおりフフンと鼻を鳴らしていた。

「ねね、ひーたんチケット買ってくるから、並んでて」

振り返ってそう言った彼女は、
たすきがけにした茶色のかばんを体の後ろにやり、
小走りで行列の先のほうへ行った。

どうやらフェリーに乗るのとチケットを買うのは別の手続きのようで、
観光客は皆、チケットを買いに行く者と行列に並ぶ者とに別れているようだった。