彩紗は喘息だった。
それなのに「体力をつけて虚弱体質を克服したい」と言って、
陸上部に入り、ストイックに練習を続けている。
50メートルを6秒台で走る彼女は、身長160センチ、体重37キロ、
華奢すぎるとクラスのみんなにいつもお菓子をもらって喜んでいる。
少しクセのある髪の毛はとても短く切っていて、
頭が小さく、体の半分以上が足に見えるほどそれは長い。
きょろきょろと動く大きな目から生える睫毛は、
瞬きをするとまるでイソギンチャクのように揺れた。
私がそう言ってからかうと、「うっさい」と言って顔を抑えた。
彩紗は自分の優れた外見には気付いていないようだった。