時が止まってしまったように感じた私は、
その二人が幻のようにも見えた。
プリクラが手から落ち、
それを拾いながらも二人から目が離せずに二度、掴みそこなる。
確実にしゃがんだからではなく立ちくらみがして、
心臓は急激に早くなっていった。
女の子が自転車に乗ったのを振り返って確認した慶ちゃんは、
前を向き直って体重を地面から離してバランスを取ると、
大きく右回りをして私のほうに自転車をこいで来た。
気管を紐で縛られたように呼吸が苦しくて、
今まで慶ちゃんを見ると痛んだ場所が、
明らかに違う種類の痛みを感じていた。