「はーッ!疲れたー…」


ドサッ。



中学校で、ハードなソフトボール部の練習試合から帰ってきて、くたくたな沙織里は、自分の部屋のベッドに倒れ込んだ。



「…でも、嬉しかったなあ…」



初めて打ったホームラン。


みんなとのハイタッチ…



(練習試合だったけど…)


それでも、やっぱり喜びを隠せない。









『ドウシテ、ソンナニ楽シソウナノ?』



(!?)


「誰!?どこにいるの!?」



誰もいないはずなのに、声はだんだん近づいてきて…



『ズルイ…ズルイ…』

『アナタダケ、ズルイ…』

『憎イ…』




それどころか、声の主はどんどん数が増えていっている。


(怖い…お母さん、助けて…)


叫びたくても、声がでない。





『………殺シテヤル』




「!!!!!」


その、憎しみをもった声を境に、部屋は静寂に戻った。


(何なのよ…何だったのよ、今のは…)


沙織里は、ベッドから降りた。



そして、ベッドの下から伸びてきた手に、足をつかまれ、ベッドの奥の、異世界へと引きづられていった…


その部屋からは、沙織里の悲鳴すら聞こえてこなかった。