小学校の放課後。


辺りは、もう闇に包まれ始めていた。


「…こんなの、一生終わんないよ…」


小学3年生になってから、急に勉強が難しくなった。

「先生、ひどいよぉ…」

萌は薄暗い教室で居残りして、終わる気配もない宿題を半ばあきらめ顔で眺めていた。


「…もう、ばっくれちゃおうかな…」


ガタ…。


後ろに体重をかけ、椅子を浮かして遊ぶ。


(ふ-…帰ろ)


萌が立ち上がろうとした、その時。


『待ッテ』


(え!?)


萌は教室を見回す。

(誰も…いないんだけど…)


空耳?いや、そんなはずはない。
しっかりと聞こえた…


女の子の声。



…カタカタカタカタ…



「!!!!」
ビクッ。


机が…震えてる…。



机を恐る恐る横目で見てみると、机の中のスペースに、黒いモノがうごめいているのがわかる。


カタカタカタカタカタカタ…



震えはどんどん激しさを増していく…。


ゴクッ…


萌は、心を決めて、かがんで机の中を除き込んだ。



「……あれ?」


何にもないじゃん…

なんだ、びっくりした…


かーえろっと。


萌は後ろを向いた。

『一緒ニ遊ボ?』

口が裂けるまでに笑った、左目のただれた女の子。



…萌のすぐ目の前に、
ソレは…いた。


「いやああああああ!!!!!!ッ」




萌は床に倒れた…













「…づかっ…しのづ…」




「篠塚!!!!!しっかりしろ!!!」


「せ、先生…!」


「一体どうした!?お前…教室の床に倒れてたんだぞ!?」


「先生…ッ!!!怖かった!!!!」


ギュッ。

「そうか…、怖かったんだな…よしよし」




グサッ…



「!!!し、の…づ…か…?」

ドサッ



「あたし、篠塚じゃないよ…?センセ」



この身体は、もう、あたしのもの…