言葉が出ない清水を見て、大雅が口許に優雅な笑みを浮かべる。

『ここにいらっしゃれば良いじゃないですか。
紫馬さんのご学友なら、いつでも歓迎いたしますよ』

『えー、おじさんもうちに入るの?』

どこか不満気に言ったのは頬杖をついて足をぶらぶらさせている都ではあるが、おそらく清水の本音でもあるだろう。
大雅は紫馬の向こうから、都を見る。

『その必要はないと思いますよ。
ねぇ、紫馬さん?』

『入れなくはないけれど、無理に入らなくてもいいと、俺も思う。
世襲制だし、基本』

『せしゅーせい?』

聞きなれない言葉に、都が首を傾げる。

『親から子へ、代々受け継いでいるってこと。
総長の息子が大雅くんだから、次期総長になるってことだよ』

要は外部の人間は入りづらい仕組みになっている、ということなのだ。
それにこだわっている理由は、銀組が出来た当初にまで遡る。

もっとも、抜け道などいくらでもある。
例えば、紫馬宗太は、このとき若頭であった<紫馬 一郎>の養子であり、実子ではない。

しかし、紫馬は詳しいことはこのときは語らなかった。