『都さんっ』

銃声を聞きつけたのか。
少年の声が響き、少女の身体を抱き寄せたのが見えた。

『あ、お兄ちゃん。
ねぇねぇ、私、おじさんのこと助けてあげたの。
偉い?』

ほめて、ほめてと。
子供らしい無邪気な声が路地裏に響く。

意識を失いそうな清水の鼻に、暴力的な血と硝煙の匂いが入ってごほごほとむせた。


『……ヒデさん。
俺の娘を殺人犯に仕立てるのは、やめてもらえます?』

これまた場違いなほどのんびりとした、懐かしい声が耳に聞こえた。

『……紫馬?』

聞き間違えるはずもない。

くすり、と。
彼の小さな笑い声が聞こえた。

『連絡くださいって言ったのに。
傷つくなぁ』

そう言って、紫馬は清水の上に乗っている男の死体を退け、自分の背丈とそうも変わらぬ清水の体を抱きかかえた。