嫌な間ではないものの、何だか、少し落ち着かない。けれど、彼……、ジルは、ゆったりと座って、興味深そうに、バーテンダーの手元を見ている。わたしは、目の前に置いてある、ピスタチオの入った鉢を玩びながら、フレンチフライの来るのを待った。あまりに空腹なので、ビールも、一口しか飲んでいない。こんなお腹に流し込んだら、きっと、すぐに酔っぱらってしまうだろう。そうしたら、また、彼に迷惑をかけることになってしまいそうだ。
「今日は本当は、gardensに行かないつもりだったんだ。けど、行ってみて、良かった」
 ジルはそう言いながら、また、ビールを飲む。
「……gardensで、わたしのこと、聞いたの?」
「そうだよ。捜してるみたいだった、って聞いて、僕も捜そうかと思ったんだけど……そんなことしても、会えないかもしれないだろ。で、ここで、先回りしてたんだ。でも、こんなに遅くなるとはね」
 わたしは、思わず俯いた。
「ごめんなさい、まさか、来てくれるだなんて。しかも、ずっと、待っててくれるなんて……」
「もしかして……、タウンも行った?」
 ジルは、はっと、閃いたようにわたしの顔を見て、言った。
 迷いに迷いながら、わたしは、正直に頷いた。
 ジルを捜しに、そんなにあちこち行っただなんて、何だか恥ずかしかったのだ。
「!? そんな、大丈夫だったかい? 女の子1人で、こんな夜遅く、出歩いていい場所じゃないよ。もちろん、パトンもね」
「……平気だったわ、大丈夫。たまたま大丈夫だった、ってだけかもしれないけど」
 そんな風に、口では強がってみせたものの、タウンを歩き回っていたときの、肌に感じる薄ら寒さというか、その怖さ、を思い出して、内心では、身震いをしていた。
「そうだよ」
 と言いながら、とうとう、彼は瓶を空にした。
 そして、バーテンダーに瓶を掲げて見せながら、1、と、指で示した。すると、すぐにバーテンダーがやってきて、新しいビアシンを置いていく。同時に、フレンチフライと、トマトケチャップが運ばれてきた。それに、スパイシーなグリルドチキンも。