「……終わるまでに、考えておいてくれればいいよ。で、……何か?」
 ぽかんとしているわたしに対し、彼は、涼しい顔でそう言うと、さっさと、時計のアラームをセットしていた。
 何だか、とてもビジネスライクな感じ。もちろん、これが彼の仕事なら、それは仕方の無いことなのだろうけれど。
 彼は、観光客だとばかり思っていたのに。
 彼が、まさか、この島で働く人だったなんて。しかも、タイマッサージャーだったなんて。確か、ホテルに滞在してる、って言ってなかった? そう思ったら、急に、むくむくと、理不尽な怒りが込み上げてきた。
 ……けれど、わたし、何も自分から訊こうとしなかったじゃない。
 わたしは、心の中で、自分の怒りに対して、首を横に振った。
 ノー。彼が悪いんじゃないでしょ……多分。
「こっちを頭にして、仰向けに寝て」
 彼は、デンファレの方を指差して、そう言った。
 わたしは、言われた通り寝転がると、ぼーっと、天井を眺めた。きっと、彼を見ない方がいい。意識してしまうと、身体に力が入り過ぎてしまう。
 でも、どこから始めるのだろう。そう思いながら緊張していると、彼は、早速、わたしの足下に座って、足をマッサージし始めた。ぎゅっと指圧のようにしたり、揺すったり、肘でぐりぐりと押したり、自分の足を使ったり。もちろん、普通にタイマッサージしてもらっているだけなのに、既に、わたしの心臓は、今にも破裂するのではないかというほど、激しく鼓動していた。クーラーがよく効いている部屋なのに、顔が熱い。