おずおずとサンダルを脱いで、マットレスに上がった。誰も来ないうちに着替えをしてしまおうと、さっさとワンピースを脱いで、ささっと素早く着替えた。マットレスに敷いてあるシーツは、ノリが効いていて、ピンと張っている。触るとサラサラとしていて、とても気持ちがいい。

 そのとき、ドアのノックとともに、女性が入って来た。手には、グラスの乗ったお盆を持っている。そして彼女は、タイ語で何か言いながら、そのお盆を差し出した。多分、このグラスに入ったお茶のようなもの、わたしがもらってもいいのだろう、と察しをつけて、コープンカ、と言いながらそれを受け取った。彼女が去ってしまってから、わたしは、マットレスに座りながら、それを飲んでみた。甘いアイスティーだった。あまりに甘すぎるので、一口だけ飲んで、デンファレの一輪挿しの隣に置いた。

 静かだ。とても静か。
 受付のところでは、マッサージが終わったらしい男性がちらほら居て、音楽もかかっていて、結構賑やかだったけれど、こうして部屋に入ってドアを閉めてしまうと、怖いぐらい、静かだ。手持ち無沙汰で、わたしは、キョロキョロ部屋を観察してしまう。入り口の近くに調光器を見つけた。暗めにしてあるけれど、明るくもできるようだった。そして、隣のマットレスとの間を仕切れるように、天井に、カーテンレールがついているのも見つけた。