そんなわたしをよそに、ガイは、ニコニコしながら受付の女性に何か説明すると、その女性も微笑んで、わたしと何やら帳面とを見比べながら、ガイに、何か言っている。そして、あらかじめガイに支払っておいたお金を、ガイが、その女性に支払った。
 そして、領収証をもらうと、わたしに向き直って、すぐ近くのドアを指差した。
「あの部屋だそうです。部屋に入ったら、寝間着に着替えて、ウエルカムドリンクを飲んで待っててください。すぐ、マッサージが始まりますから。マッサージが終わる前には僕がここに来てますので、安心してください」
「き、着替えるの?」
 別に、変な意味はないだろうに、ここの怪しげな雰囲気に呑まれ、思わず戸惑ってしまう。
「そうですよ。そんな顔しないで。大丈夫ですから」
 ガイは、ニコっと笑いながらそう言い残して、行ってしまった。
 取り残されたわたしは、咳払いをして気を取り直すと、さも平気そうな顔をして、指示された部屋に入った。もちろん、本当は、内心どきどきしている。と、そこには、予想外にも、マットレスが2つ並んでいた。ただそれだけだというのに、またもや、心の中でビクッとしてしまう。
 わたしの予想では、診察台のような、細めのベッドだったのだ。それが、ぐんと低い、床敷きのマットレス。しかも、照明がかなり暗めで、壁には、マッサージの料金表と、飲み物の料金表が貼ってあった。何故か、食べ物の料金表まで。そして、二つのマットレスの間には、デンファレが一輪挿しに生けてある。例の寝間着は、奥のマットレスの足下に、キレイに畳んで置いてあった。そして、微かにラベンダーの匂い。