まだ朝食時だというのに、日向に居ると、汗が吹き出てきそうだった。
ぐっと伸ばしているせいで、足が庇からはみ出ている。それを引っ込めると、わたしは、椅子の下で足首をクロスさせて、落ち着かせた。
また、カップが空になってしまった。
もう一杯お替わりをもらおうかと迷っていると、ちょうど、コーヒーポットを持ったウエイターが横を通りがかった。彼は、わたしが何も言わないのに、すぐに注いでくれて、丁寧に、お砂糖とフレッシュも置いて行ってくれた。普段はそれらを使わないけれど、今回は、何だか使ってみようという気になって、わたしは、せっせとそれらをコーヒーに入れた。そして、スプーンでかき混ぜると、口に運ぶ。
すると、さっきのウエイターがまた舞い戻ってきて、浅黒い肌に、真っ白の歯をニコッと見せながら、
「昨夜、ビーチで見ました」
と言った。
「そうなの。あなたも居たの」
と、ぼんやりと言いながら、わたしは、あの時、背後に感じた気配を、思い出していた。
「あの男の人、恋人ですか」
相変わらず笑いながら、彼は、そんなことを訊いてきた。
あの男、のことだ、きっと。
あの気配は、やはり、この人そのものだったのだろうか。
「……さぁ、どうかしら」
わざと曖昧に答えて、彼の反応を見た。
彼は、まだ笑いながら、軽く会釈して、そのまま、またキッチンへと戻って行ってしまった。