純がトイレにたって仕方なく電話を続けた。


「どうしたの?純が席外したから言うけど、こんなことしてると、本気で純とはダメになるぞ」


「…花巻くん、なんて言ってた?」


「瀧澤の可愛さを再確認したって言ってたよ。なぁ、何が望みか自分の気持ちに正直な方が回り道しないと思う」


「でも、私、軽音部部長の山浪くんに用事なんだもの」


「へ?」


「何度言ってもタカノくんから退部は待ってくれって連絡が来るの。今日のカナメ祭の準備で話し合った感じでは、私、既に軽音で必要な部員と思うんだけど」


「必要、不必要を決めるのは、本人の意志と思う」


「なんだけど、退部届保留にしちゃってるから、転部出来てないし。部長として部員を助けて欲しいの」


ぐうの音も出ない。


ボク達が一緒に帰って、純がいるのも御見通し。
純が自分に関心を取り戻したのも御見通し。


そして、純の目の前でボクに電話することが、どれほど効果的だかも、
みんな分かっているんだろう。




女の子ってみんなこう?


〜デモ真知子サンハ違ウ〜



「タカノにはボクからもよく言っとくよ」


「ありがとう。山浪くんて優しいよね?部員みんな毅って呼んでるし、毅くん、でいい?」


寧ろ、呼び捨てでも、ツヨタロウでも、何でもいいし。


「いいけど」


「じゃあ、毅くん、ありがとう。また明日ね」



結局、電話中、純は戻らなかった。


…大?とか。


ボクはギターを弾きながら、純が戻るのを待った。