「歌…ですか?」


真知子さんが慌てて


「いいんだよ、無理にそんなことしなくても。」


とメンバーを見てため息をつく。


このバンドはみんな穏やかで人もいいけど
みんなマイペースで変わり者だ。


そして本気でボクを可愛がってくれてる。


この新しく見付けたボクの居場所で
特に優しく待ってくれているのが真知子さんだ。


初めからそう感じた。


だから話し掛けた。


折れそうな細い足首に腕時計を付けて
落っこちそうな大きな黒い瞳。


この人の瞳が真正面からボクを見て、
「なあに?」
と答えた日をボクは忘れない。


そんな真知子さんが気を使ってくれてるのも分かるけど


歌か…。


「…歌ってみたい、です」


メンバー全員が、真知子さんまでがどよめいた。