キスをされ、抱きしめられ、懸命に返した後、花巻くんの温もりが私の髪に、肩に、唇に残る。

愛してる。


…だけどさよなら。


どうやって家までたどり着いたか、記憶がない。


一人、部屋の隅で膝を抱えていると、花巻くんに掴まれた手首が未だに痛い事に気付いた。


花巻くんもまだ、私を好きなんだ。


でも、そんな花巻くんに身も心も与えた君代ちゃんの存在が、
私の出した結論を後押ししてくれる。


予備校で私にキスした花巻くんは、今まで私は知らなかった花巻くんだ。


華奢な体なのに、やはり力はすごかった。


男の人なんだ。


君代ちゃんと過ごす時はどうなのだろう。
切ない思いに胸が痛くなる。


忘れなくては。


忘れられるのだろうか。


とにかく、タカノくんとも別れよう。
毅くんともリセット。


次は花巻くんを忘れる為ではなく、自分の為にいい恋をしなくちゃ。


涙でぐしょぬれの顔で無理矢理笑顔を作ると、
それでも幸せになれるような気がする。


笑わなくちゃ。


笑ってさよなら。


ありがとう。


初めて愛した人。


私の為に涙を流してくれた人。


お互い、幸せになろうね。