毅くんは黙りこくったまま、目を開けたり、首を傾げたり、
これはさっきの花束といい、ヒロシからなんの先入観を得てなかったとしても、

愛の告白

しか考えられない。


さて、どうしたら傷付けないような断り方が出来る?

だけど、そもそも毅くんがそう思っているかどうかも、分からない。

私一人先走っていたらどんなに恥ずかしいか。

何回も告白を受けてきたにも関わらず、毅くんほどこの話題を避けて通れたらと思う相手はいなかった。

割と簡単に断ることを躊躇わない私でも、毅くんだけはそんなイージーな関係では有り得ない。

せめて毅くんが成人していたら、話は単純だった。

18歳の少年にはまだまだ世界は広すぎる。本当に私でいいのか、彼の判断基準は少ないのに、騙すみたいには付き合えない。

毅くんの全ては、私には理想以上だ。

ただ一つ、年齢だけが、私には付き合えない理由。


私が毅くんに対して恋愛感情で動くかどうかというと、
それもNOだ。


先に大人になる年上の方が、冷静な分損もする。

私の複雑な気持ちも、毅くんなら分かってくれるだろう。
毅くんが大人になって、それでもまだ、私を必要としてくれるなら、私は喜んで毅くんと恋をする。


こんな冷静さは恋ではないと言われたら、身も蓋も無いけど。


前菜もサラダもスープも終わり、魚介のパスタになっても毅くんは黙ったまま。


そしてデザートはティラミスだった。


「毅くん、ティラミス美味しいね」

「真知子さん、ボク…一人暮しすることになったんです。だから家庭教師、ちょっと頼みづらい」

なんだ、そんな話だったんだ。

「どうして一人暮し?」

「母が父と再婚することになって、神戸戻るんです。ボクは受験あるし、こっち残りますんで、今部屋捜し中」

急に淀みなく喋りだした毅くん。告白しないでくれてありがとう。

「一人暮しだって教えに行くよ」

「男一人のとこに真知子さんだって心配でしょ」

「なんで?毅くんでしょ?今までだってお母様が遅い時なんか二人だったじゃない」

「だとしても、いつ母が帰るか分からないし」

「私気にしないわ」