もう一つ、わたしには腑に落ちない事があった。


「嶋村さんは、なぜわたしをあのイベントへ招待したんですか?」


もしかしたらと思って聞いてみたけど、案の定オーナーは答えを知っているようだった。


「…あのイベントは、荘司くんが初めて日本で手掛けた、大規模なプロジェクトだったんだよ」


オーナーがふぅ…と息を吐く。


「荘司くんは…なんていうか…仕事以外は全く無頓着というか…。三ヶ月たっても君をなかなかデートにも誘えなかっただろう?」


…少し、よめてきた…。


「私が、自分のテリトリーになら誘いやすいんじゃないかって。女性は甘いもの好きだし…と言ったら、妙にはりきっちゃってね」


…なんか…目に浮かぶような…。


わたしが行くと言った時、拳を突き上げて喜んでた姿を思い出して、笑いが込み上げてきた。


「小堀さん、荘司くんは仕事バカで時に周りが見えなくなってしまう事もあるけれど…」


オーナーはまっすぐにわたしを見据えた。


「頼まれてやってくれないだろうか?」


「オーナー…」


わたしは、ふっと息をつくと笑顔で答えた。


「しょうがないですね」