当然、彼は会場のあっちこっちに飛び回っていて、わたしにかまってるヒマなんて一秒たりとなかった。


ホテルのエントランスでかわした挨拶が最初で最後。


そっちから誘ったくせに、どういうつもりだってはじめは思ったけど、


極上のケーキを味わいながら、スマートに仕事をこなす彼の姿を眺めているうちに、責める気持ちはいつのまにか消えてしまっていた。


それ以来、嶋村さんとは会ってない。


携帯の番号もメルアドも知らないし…。



お礼が、言いたいのに…。



嶋村さんのこと、誤解してましたって、言いたいのに…。










「――ユキちゃんッッ!!!嶋村さん来たよっ!!!」



「えッッ…!!???」



時計を見ると、14時半をまわっていた。