「別にあたしじゃなくたっていいでしょ」


「まぁな。代わりがいるなら別にお前じゃなくてもいいけど」


その言葉にほっとする加奈子。


だがその顔もすぐに青ざめる。


加奈子がまわりを見渡すと、みんな視線を合わさないように逃げたからだ。


誰かが代わってくれるだろうと、甘い考えを持っていた加奈子は愕然とする。


加藤はその光景を見て笑った。


「決まりだな。じゃあ、はじめるか」


「ちょ、ちょっと待って」


加藤の言葉を遮るように、麻里子の口から自然と言葉が飛び出していた。


その瞬間、みんなの視線が自分に集まる。


言葉を遮られた加藤がこちらを鋭い目で睨んでいた。


「なんだ?」


「い、嫌がってるじゃない。だからその、無理に参加させなくても……」


麻里子は勇気を振り絞って言った。


自分でもこんなこと言うなんて意外だった。


自分以外の誰かなら誰でもいいと思っていたのに。


「おいおい、おれがいつ無理やり誘ったよ。大久保にはお願いしてるんだよ。あとひとりいるから参加してくれって。嫌ならいいよ。その代わり渡瀬、お前に参加してもらうけどいいか?」


「あ、あたしが?」


「ああ。オレはそれでもかまわないぜ」


「それは……」


なんで?


なんで、あたしが?


「どうすんだよ?」


嫌だ。


やりたくない。


でも、あたしがやらないと加奈子が……


「もういい加減にして!」


「?」


叫んだのは飯倉奈津美だった。