いまでは名前も思い出せないが、男子にあだ名でからかわれていた気がする。

キュウリ?カボチャ?ラッキョウ?なんだっただろうか。

考えてみたらあの時の12歳が、もう22歳か・・・


いま、どうしているだろう。



だが吉村紀子は全くそんな積極的な女性には見えない。

控えめで、むしろオレに話掛ける時は、勇気をふりしぼっている感じだ。

考え過ぎはやめて元に戻ろう。



しかし恋愛事だとこんな風に楽しみながら「企画」ができるのに、仕事になるとすぐに行き詰まるのはなぜだろう。




オレはとりあえず、「JJ」をコンタクトポイントにすることにした。




「コンタクトポイント」というのは、最近マーケティング担当者がよく使う言葉で、

ターゲットを目的地(商品)まで誘導するために至る所に張り巡らした広告の仕掛けみたいなこと。タッチポイントとも言うようだ。


昔みたいにテレビCMだけで物が売れた時代と違って、いま広告クリエーターには、とにかく消費者を店頭まで呼び込む「仕掛け」や「シナリオ」の企画力が求められる。

しかも店頭にも来ないで、ネット上でモノを買う若モノたちを相手にする場合は更に高度なテクニックが必要になる。




「シナリオに、《驚き》がなければ、人は動かせない。」




これが、ゼミの釜井教授の口グセだった。








「JJ」はオレの行きつけのフルーツカクテルバーだ。


バーと言っても、生ビールもあるし、シェフもいて食事もちゃんとできる。

オレは月に1,2回、バーテン(ここではミクソロジストと呼ぶらしい。)の内山くんとシェフの松さんとバカ話をしてゆく。



さっき内山くんに、

「最近お客さん少なくない?ちょっと動員してあげようか?」

と声を掛けてみた。案の定、

「ぜひお願いしますよ。最近メチャメチャ暇で、このままだとウチつぶれちゃいますよ。」

との答えだった。