「でもあんまりイヤそうじゃなかったよね、

ラッキョウって呼ばれるの。」


「はい。らっきょうは大好きだったし、

らっきょうって、実はユリ科なんですよ。

らっきょうの花はすごくキレイで、

鳥取では《砂丘のラベンダー》って呼ばれています。

それに生命力が旺盛なので、砂丘で育つんです。」




「えっ、砂丘でとれるの、らっきょうって?」




「はい。夏に砂に植え付けて、日本海から吹き付ける厳しい冬の風にもじっと耐えて春を待つんです。

そして翌年の5月から6月に収穫します。

冬が厳しければ厳しいほど、色白で堅く引き締まったらっきょうに育つんですって。」



「確かにすごい生命力だ。我慢強いって言うか、しぶといって言うか。」



「私にピッタリな名前じゃないですか?」





「最後にひとつ聞いていい?」


「はい。どうぞ。」


実はラッキョウのシナリオでひとつだけ腑に落ちないことがあった。


「そもそもの始まりは、お姉さんにあげたフリーペーパーだよね。

クリスマス特集の。

いくらなんでもあれは偶然だよね。」



「まさか。山木先生、そんな都合のいい偶然はありませんよ、世の中には。」


と言って、ラッキョウがバッグに手を入れた。




「これでわかりませんか?」




そこにはサンタクロースのトンガリ帽をかぶった、うりざね顔の女子大生がいた。