やっと恭子のシナリオの全体像が見えて来た。


そう言えばイタリアンレストランに来たのにまだビールしか頼んでいない。


もう1時間も、ずっと話をしていたことになる。

いや、ただ聞いていたことになる。



「なんか頼みましょうよ。おいしいもの。

それと改めてお祝いしてください。

私のオトナ記念日。」


しかたないのでスプマンテのボトルを頼み、乾杯をした。


「サルーテ!」


あの12歳のラッキョウが、スプマンテを飲んでいる。


あのときの積極性は全く失われていないようだ。





「山木さん、私、なんでラッキョウって呼ばれてたか知ってますか?」




確かに男子からそう呼ばれていた。

顔立ちが「らっきょう」?



「顔もそうだけど、私の祖母が鳥取に住んでいて、よくらっきょうを送ってくれたんです。

鳥取って、らっきょうの名産地なんですよ。

それを母がいつもお弁当に入れてくれて。」



鳥取は砂丘しか知らないが。

まさか砂丘でらっきょうがとれる訳じゃないだろう。




「らっきょうって、ちょっと匂うじゃないですか。

それを男子が見つけて・・・

女子からは普通にオキョウって呼ばれてたんだけど、

それ以来、男子からはずっとラッキョウでした。」