「国王陛下!このままでは、奴らはこの城までやって来ます!今なら間に合います!どうかお逃げ下さい!」

鎧を身に付けた一人の兵士が、サラス国王に頭を下げた。

「私はこの国を守るため、生まれたのだ。何故ここから逃げなければならんのだ?」

そう言って王は立ち上がった。

「私は逃げん」


「陛下……」


兵士は震えた。

今まで不透明だった"死"。
それが目の前に迫っている中で、この1人の国王は、唯一残った生きる道ではなく、最も辛く苦しいであろう道に、進もうとしているのだ。

それも、強い意志を持って。


「私は残る。しかし、娘のリティアは逃がしてやってくれ。ここから最も遠く離れた島、クロウ島へ」

「はっ!」

「ジン君」

ジンと呼ばれた兵士は、驚いて返事ができなかった。

「えっ……」

「これでも私の周りにいる兵士の名前は、覚えているよ?……さあ、ジン君。リティアを頼んだぞ」


ジンは跪き、言った。


「私の命が尽きるまで、リティア様を、お守りいたします!」