「コレってどんくらい回ってる?」

「だいぶ回ってると思うよ。女子も結構知ってたし」

「うぅ〜っ、痛いな……」

「あんたね、痛いなんてもんじゃ無いって」


呆れ顔で続ける奈緒美は、当のあたしよりも現状がヤバイものだと承知している様で。


「みんなこんなの信じてないと思うけど、先輩・後輩は危険!これをいいことに襲われてもおかしくない!!」

「えっ、2年だけじゃないの!?そんなとこまで回ってんの!?」

「そりゃそーでしょ。女子は回さないにしても、男子は笑いながら回してんじゃない?他校まで回ってないといいけど……」


なーにー!?

そんなに悪質かつ大掛かりな嫌がらせなの!?一体あたしはどこにそんな恨みの種を蒔いたんだい!!


「他校!?冗談じゃねーっての!!」

「その通り。冗談言ってる場合じゃないよ!」


あわあわとパニクるあたし達を突如“ヴ〜”と低く唸ったあたしのケータイが一瞬にして黙らせた。

物の見事に。


「……」

「……」


お互い声も出さずにあたしのポケットで単調に唸るバイブ音に注目……注耳。

まさか。

そんな、まさか。

唸っている相手が『まさか』に続く者でない事を願う。

しかし、数秒置きに短く何度も唸るケータイから推理出来るのは、願いに逆らい『まさか』に続く者だ。


「……見ないの?」


訝しげに問う奈緒美。


違うの、奈緒美

見たくないの

うふっ


なんて思ってたって、ここまで唸られちゃ見るしかない訳で。

覚悟を決めてケータイを開く。

すると画面に驚異的な記録が樹立されていた。


着信27件
新着メール92通


……あたしってば友達たくさんじゃん。

ってなんでやねーん!!!!