「あ、莉子!」
「部長が呼んでるんだけど……お掃除中みたいだね」
整った顔立ち。
それを引き立てるナチュラルメイク。
ふわふわの髪は天然なのか巻いてるのかわからない。
華奢な体の線は、だぼついたジャージの上からでもわかる。
そのジャージだって紺にピンクのラインとまた可愛いらしい。
この子が『あの子』。
先週から新倉の彼女の『あの子』。
可愛い『あの子』。
山本莉子(ヤマモトリコ)ちゃん
あぁ……
やっぱり可愛いんだなー
新倉を見ると、幸せそうに顔を赤らめている。
全く似合わない。
「マジで?あーっと……春永、あのさ…」
何?
その顔
こーんな可愛い彼女がこれまた可愛く困った顔してんだよ?
行くなって言ってやりたいけど、アンタがそんな顔してちゃ言えないじゃん……
だからあたしは言ってやった。
「いってらっさい。そして二度とその面見せるな」
さすがに面と向かって言えなくて、新倉に背を向け落ち葉を掃き続けた。
新倉はあたしの放ったいやみには触れず、ただわりーな、と言って莉子ちゃんの手を取っていなくなった。
「……そんなに嬉しそうにするな。馬鹿」
やっぱり『あの子』は可愛かった。
そしてあたしの中では『あの子』と呼ぶにふさわしかった。
それほどあたしと『あの子』は違った。
可愛い『あの子』と
サル女の(ただのサルかもしれない)あたし。
一人ぼっちだと落ち葉を掃く音と風に飛ばされる音しかしなかった。
次の日、あたしが学校に行くと最悪な事になっていた。