−11月初旬−


確実に毎朝寒くなっているのに、離れた所で可愛く笑う『あの子』の周りは温かそうだった。


バシッ


頭に衝撃を受けて振り向くと奴がいた。


「おーっとわりぃ手が滑った!」

「あんたね〜!挨拶くらい普通にできんのか!」

「人間にはな。お前、サルだから」

「サルじゃない!!」


憎たらしい笑顔で話すコイツは新倉一輝。

去年からあたしと同じクラスで、
一週間前から『あの子』と付き合ってる。

ついでに、一年前からあたしの好きなヒト。

これまたついでに、新倉はあたしの気持ちにちっとも気付いていない。