「さすがに後援会の方ね。
久保田議員の親戚にもお詳しいみたい」


再び歩き出しながら、陶子さんはくすくす笑った。


俺は正直、あの暑苦しい風貌のおじさんが苦手だった。


「この町のことは何でも知ってなきゃ済まない人なんだよ。
明日には、佐野家の美人外交官の娘が帰省中って噂は、町中をかけめぐってるよ」


陶子さんはクックッと声を押し殺しながら笑って言った。


「大切な議員の2世に悪い虫がつかないか心配なのよ、きっと」


冗談じゃない。


だが、陶子さんの言うことはあながち的外れでもないので、俺は盛大にため息をついた。


母のお通夜の時、俺は酔った太田さんに言われていた。

「涼介君、お母さんが亡くなって大変かもしれないが、今後はますます、お父さんの意思を継いで立派な政治家になれるように頑張って勉強しないとな。天国のお母さんを安心させてあげるんだぞ!」


訳がわからない……