俺は陶子さんに不動産屋さんを紹介した。


「父の後援会でお世話になってる太田さん」


太田さんは汗でてかった丸い額を首にかけたタオルでぬぐいながら、遠慮なく陶子さんをじろじろと眺めた。


「いとこっつったら、佐野さんとこの?
たしか国立大学出て、外交官してるっていうお嬢さんがあんたかね」


顔が広い太田さんは、陶子さんのこともどこかで聞き及んでいたらしい。


陶子さんは如才なく答えた。


「はい、いつも両親がお世話になっています。1週間ほど、夏休みで帰省しているんです」


「あー、そうでしたか。
ご両親によろしくお伝えください」


太田さんは陶子さんにそう挨拶すると、店の中に戻っていった。


あんなに暑そうにするなら、わざわざ冷房の効いた店から出てこなくていいのに。