約束の時間通りにうちに来た陶子さんと連れ立って、美術館へ向かった。


近所の不動産屋の前にさしかかったとき、間取り図だらけの扉を開けて店の主人が出てきた。


「おう、涼介君、毎日暑いなあ!」


パタパタとうちわを使いながら、小太りなおじさんは威勢よく声をかけてきた。


「こんにちは」


軽く会釈をして通り過ぎようとしたが、おじさんは陶子さんにあからさまな興味を示して言葉を続けた。


「今日はえらい美人を連れてるじゃないか」


仕方なく足を止めた。


「いとこの陶子さんです」


変な誤解をされるより素直に答えておいたほうがいい。


隣の陶子さんもおじさんに会釈した。