車に乗ると、陶子さんはシートベルトを締めながら言った。


「じゃあ、これがいい機会になるんじゃない?

私もね、初めて美術館に行ったのは友達の付き合いだったの。

マグリットだけじゃなかったけど、やっぱりシュルレアリスムの画家の作品を集めた展覧会でね。

当時の私は、美術になんてまったく興味がなかったんだけど、とても不思議な絵が多くて、面白かったわ。

なんだかあの頃を思い出して、見たくなったのよ、付き合って。

見て損はないと思うわよ」


まあ、そこまで言うなら。


俺は同意した。


明日も陶子さんにいったんうちに来てもらい、一緒に歩いて行くことにした。