連日続いている猛暑も、冷房の効いた部屋にいる限り、自分には関わりのないことだった。
夏休みが始まって、5日。
何をする予定もなく、起こす人もいないので毎日寝坊を繰り返していた。
9時過ぎ、誰もいないリビングに下りてきたのを見計らっていたかのように、電話が鳴った。
滅多に鳴らない家の電話は、面倒なので常に留守電にしてある。
どうせ何かの勧誘だろうと、そのままにしてキッチンへ向かった。
冷蔵庫からペットボトルを取り出しながら、機械のアナウンスに続く声に耳をすませた。
「ご無沙汰しています。
陶子(とうこ)です。
昨夜、帰国しました。
瑞江(みずえ)さんにお線香をあげに伺いたくてお電話しました。
えーと、どうしようかしら…」