車に戻りながら、陶子さんに言われた。


「さっきの様子だと、美術館にも行ったことなさそうね。
あんなに近所にあるのに」


地元でも有名なその美術館は、うちから徒歩で行ける大きな公園の隣にあった。


子供の頃、公園には数え切れないほど遊びに行ったけれど、美術館には足を踏み入れたことがなかった。


そう言うと、陶子さんに聞かれた。


「絵は嫌い?」


「別に好きでも嫌いでもないけど」


陶子さんは頷いた。


「まあ、いくら近くにあっても、機会がなければ行かないものかもね」